6月
13th
月
13th
全国で次々と明らかになった
『所在不明』の高齢者たち。
それは戸籍上だけで
「生きている」
というケースだった。
だが、
その少女には
戸籍すらなかった―――。
無戸籍児童、所謂『闇の子問題』とは『高齢者所在不明問題』の影に隠れた現代における深刻な社会問題のひとつで、主に「育児放棄(ネグレクト)」や虐待問題として扱われる。
戸籍がなければ、それを基につくる住民票もない。保険証もなく、学校にも通えない。児童手当の様々な公的サービスが受けられない。
そもそも正式には名前すらない。
それはその子供が公には「存在しない」ことを意味し、こうした行為を『究極の虐待』と指摘する声もある。
とある事例を参考にして頂こう。
住宅密集地にある児童公園で、近所に住む幼い孫と遊んでいた女性に、10歳くらいの少女が話しかけた。
ブランコ、鉄棒、滑り台…。
少女のほかに児童の姿はない。夕方ここで歓声を上げる児童たちは、まだ小学校にいるはずの時間だった。
自らの生活についても話し始めた少女。
「引っ越してきた」
「お母さんが帰ってこない日もあるの…」
この話を伝え聞いた女性の娘は、前の年の夏に同じ公園で一人きりの少女を見掛けたことに思い当たる。不審に思い、児童相談所に通告した。
少女は公園からほど近いアパートに住んでいた。小学校には在籍しておらず、母親は通わせようとすらしなかった。通告から一年以上が過ぎ、児童相談所は遂に少女を一時保護した。
手続きの必要もあり照会すると、少女の戸籍はどこにも存在しなかった。
その背景に母親は離婚を経験し転居を繰り返していた。
「とにかく実家から遠くに」
「別れた夫に居所を知られたくない」
我が子の出生届を出すことさえも躊躇い、ただひっそりと暮らすことを望んだ。
少女は県内の病院に委託一時保護され、そこから学校に通い出した。本来なら小学5年生だが、学校経験がないため2学年遅れの小学3年生のクラスに入った。
生まれて10年以上過ぎてようやく戸籍がつくられ、少女に初めて社会の光が当たった。
一方で母親は次第に少女から遠ざかる。面会予定も度々キャンセルされた。
一時保護から2年近くに母親は失踪。娘の共に暮らす願いは叶わぬまま、少女の児童養護施設での新たな生活が始まった。
当然、少女に罪はない。
彼女くらいの年齢であれば「ケーキ屋さんになりたい!」「優しいママになりたい!」と希望に満ちた淡い夢を抱き笑顔を綻ばせ、端から見ればその可愛いらしい主張に頷いてしまう一番輝く年頃だろう。
友達との何気ないお喋りで楽しく登下校したり、ご近所との付き合いもなく、独りで遊び過ごす子供を親は想像できるだろうか。
福祉関係者は「出生届けが出されない『闇の子ども』所謂無戸籍児童はまだいるはずだ」と言う。
だが「県こども政策課」は統計がなく「把握できない」と言う。
大きな社会問題となった所在不明の高齢者とは対照的に、手がかりの戸籍すらない、『社会から隔絶された存在≪闇の子≫』の姿は見えない。